2013/06/14

[感想文]萩原清文 「好きになる免疫学」



三行レビュー

かなり分かりやすい構成のよい入門書だとは思うが、サプレッサーT細胞のような現在は疑わしいとされているような内容もあり、2001年から10年異常が経過して最新の知見によって色々と変わってしまっているため、もう少し最新の情報に触れたほうがいいかもしれない。

感想

はしかなどは一度かかればほぼもう二度とかからないといわれるのに、どうして狂犬病の予防接種は毎年受けなければならないのか?そういった疑問を持ったのだが、免疫についてあまりちゃんと調べたことがなかったので読んでみた。
が、ワクチンの仕組みについてはあまり記述がなく、生ワクチンと不活化ワクチンの違いなども書かれていなかったのでちょっと肩透かし。
要は不活化ワクチンは効力が短く、生ワクチンや生きたウイルスに感染して獲得された免疫の効力は長いから、ということだが、そのメカニズムは分からなかった。

ワクチンについてより、リウマチや花粉症、そしてガンと免疫のかかわりについて触れられた項目が多いのだが、いかんせん10年以上前の本のため、基本的なことは学べるがどこまで今正しいのかよく分からないのが微妙だった。

最新版書かれないんですかね。


2013/06/11

[感想文]山本七平 「日本資本主義の精神」




三行レビュー

なぜ日本にはブラック企業などというものが存在するのか、どうしてなくならないのか。1979年に山本七平が指摘していた答えがこれ。日本人の不思議な労働観と日本式資本主義の正体に迫る論考。

概要

日本において資本主義がこれほどの成功を収めたのは、日本固有の社会構造や精神性が資本主義という仕組みを非常に上手く利用できるものだったからである。

2013/06/05

[感想文]齋藤 勝裕 「へんな金属 すごい金属 ~ふしぎな能力をもった金属たち~ 」



三行レビュー

「金属」がテーマの雑学集。冒頭で述べられているが、周期表の元素92種のうち70種類が金属である。広すぎて「金属」というくくりにほとんど意味がないのではないかとは思うものの、歴史から現代科学にわたる金属の雑学が広く浅く得られて面白い。


2013/05/31

[感想文]ジム・クレイス「隔離小屋」



三行レビュー

愛と勇気と冒険の物語、ただし著者はジム・クレイス。全編を通して死の影に塗りつくされたような冒険譚であり、文明の失われた世界で浮き彫りにされる、家族という単位の物語である。

感想

舞台がよく分からない。アメリカである。川辺で見つけたという、リンカーンの刻印された1セント硬貨を主人公のマーガレット(31)がお守りとして大事にしているところを見ると、未来である。
荷車、革で作った水袋、山羊の毛皮をつなぎ合わせて作った外套。どうも人々の暮らし向きは石器時代・・・とはいかないまでも、まるで中世のようだ。

2013/05/25

[感想文]宮内 泰介編「なぜ環境保全はうまくいかないのか 現場から考える順応的ガバナンスの可能性」


三行レビュー

環境保全プロジェクトのガバナンスについての本だが、複数の人間が関わるプロジェクトがどうしてうまくいかないのか?という普遍的な問いに答える本となっている。とても面白い本。

概要

環境保全とは、科学的な管理手法だけで達成されるものではない。
科学的管理とは、「一定の条件化下」で観測される事実から一般的な法則を導き出し、一定の条件を守ることで結果を保証するものである。
しかし、大自然を相手とする環境保全においてはそもそも一定の条件を保つということ自体が困難である。


2013/05/19

[感想文]菅原出「外注される戦争 民間軍事会社の正体」


概要

private military companyの頭文字をとって「PMC」と呼ばれる、民間軍事会社についてのルポルタージュ。
元来、安全とは国家が軍事力によって国民に対し保証するものであった。 しかし現在、その多くの領域を民間の企業が担うようになりつつある。
東西冷戦からイラク戦争、そして911テロ事件等の近年の大きな紛争の中で成長を続ける民間軍事会社の姿を、関係者へのインタビューや取材を通して克明に描く労作である。

2013/05/15

[感想文]青木雄二「ナニワ金融道」



 天国に行く最良の方法は地獄へ行く道を熟知することである。
マキアヴェッリ

地獄へ行く道を熟知したければ、この本を読むと良いと思う。

人はいとも簡単に地獄に落ちる。
理由は様々だ。病気や怪我、恋愛の失敗、そして借金。
この本が扱う題材は、借金という地獄への道である。

闇金ウシジマくんという同じく金融業者を扱った非常に優れた作品がある。闇金ウシジマくんに登場する人々の多くは、何らかの形で社会から弾き出され、そのために満たされない自分自身の心のために借金をする。闇金ウシジマくんは、「青春」というテーマを扱った物語だと個人的には考えている。

一方、ナニワ金融道は徹底してオトナの物語である。
この作品の人々が借金をするのは金のためであり、生活のためである。社会の一員として、社会に溶け込み根を下ろして生活していたはずの人々が、些細なきっかけから膨大な負債を背負うことになり、地獄に突き落とされる。
いつでも誰でも、平穏な日常から一転地獄に突き落とされうるという現実が、この作品には描かれている。そして、それを回避するたった一つの方法が、騙されないために知恵をつけることだと、青木雄二は本作を通して語っている。

2013/05/13

[感想文]リチャード・ブローティガン「アメリカの鱒釣り」


 広くネットに流布しているコピペに次のようなものがある。

リチャード・ブローティガンは、「アメリカの鱒釣り」を書く際、 最後がマヨネーズの作り方で終わる小説が書きたかったと書いてた

デマである。これを最初に言った人はうろ覚えで書いたのだろうが、誤りが訂正されないまま流布されている。

わたしは、ずっと、マヨネーズという言葉で終わる本を書きたいと思っていた

が正しい。
だから1960年代アメリカのカントリー風手作りマヨネーズのレシピが知りたい人がいればだが、その人は別の本を選んだほうがよいと思う。

2013/05/11

[感想文]ロバート・スレーター「ウェルチ―リーダーシップ・31の秘訣」



概要 

1981年から20年間にわたってゼネラル・エレクトリック(以下GE)のCEOを務めたジャック・ウェルチの語録。

ウェルチがCEOになったとき、GEは売り上げ高250億ドル、純利益15億ドルの優良企業であった。GEは何の問題も抱えておらず、将来的にも発展を続けると、社内、社外問わず多くの人々は考えていた。
しかしウェルチはそう考えなかった。GEは多くの将来性のない事業を抱えていると判断し、徹底した組織のダウンサイジングとリストラを行った。多くの事業を閉鎖、売却し、多数の従業員を解雇した。そしてスピードこそ最も重要視すべき要素であると考え、それを妨げる社内に蔓延する官僚主義を払拭するため、あらゆる手を尽くした。
その20年の任期中にGEは100億ドル近い純利益を達成し、ウェルチは経営者としての名声を不動のものにした。

感想

建物は残して中の人間だけを殺す中性子爆弾とひっかけて、「ニュートロン・ジャック」という異名を取ったそうである。かっこよすぎる。
当時はアメリカでも普通に見られた終身雇用制を最初に廃止し、他の企業にさきがけていち早くリストラという概念を導入した新自由主義の負の側面を体現するような人物である。

まあそれはそれとして、ウェルチの考え方を簡潔にまとめるとこんな感じだろうか。

2013/05/08

[感想文]青木雄二「ナニワ金融道 ゼニのカラクリがわかるマルクス経済学」


概要 

「ナニワ金融道」著者の故青木雄二によるマルクス経済学の入門書。
ナニワ金融道のエピソードを引いて解説してあるので理解しやすく、解説書としてはなかなか分かりやすい部類ではないだろうか。そして、マルクス思想のダメなところも実に分かりやすかった。

感想

前々からなぜそこまでマルクスに傾倒する人間が多いのかという疑問もあったことなので、ちょうどナニワ金融道を読んだところで読んでみた。

2013/05/02

[感想文]梅原勝彦「日本でいちばんの町工場 エーワン精密の儲け続けるしくみ」


概要 

東京の工作機械メーカーのエーワン精密創業者である梅原勝彦の本。
エーワン精密は旋盤用チャックの専業メーカーで、コレットチャックのシェアNo1を占める。
この会社の特筆すべき点は高い利益率で、35%超の業績を40年近く継続している。
本書では創業者梅原の視点から、エーワン精密のこれまでの歩みを振り返り、
成功の秘訣を紐解く。

感想

短くて構成が明快で読みやすい、良い本だと思う。
「儲け続けるしくみ」とか身も蓋もないタイトルだけど、全然俗な内容でもなく、理にかなった戦略を立てている。この人は徹底したリアリストであると感じた。


以下詳細な感想。

2013/04/24

[感想文]村上春樹「1Q84」


概要

長いです。とにかく長い。

村上春樹の長編は「蛍」という短編が「ノルウェイの森」の元になっていたり、「泥棒かささぎ」が「ねじまき鳥クロニクル」の元となっていたりするが、単純に短編が長編化されているというわけでもなく、たとえば第二作の「1973年のピンボール」で主人公の追憶にのみ登場する直子というキャラは、さらにディティールを与えられて「ノルウェイの森」のヒロインのひとりとして登場している。

1Q84はそのスタイルの総決算というか、これまでの全作品を注ぎ込んだような作品だった。読んでいて常に過去作の影のちらつく作品ではあるのだが、海辺のカフカやねじまき鳥クロニクルあたりの長編は一度しか読んでおらずかなり忘れているので、過去作どうこうはなるべく置いておいて、1Q84という作品単体について思ったことを書き記しておく。